【派遣報告】桑原志織さん、ノルウェーマスタークラスレポート
2017年6月21日水曜日5/21から約一週間、ノルウェーのベルゲンで行われたマスタークラスに参加いたしました。今回この講習会に応募した理由は、リチャード・グード先生、レイフ・オブ・アンスネス先生、ヤン・イラチェク・フォン・アルニム先生という、世界的な素晴らしいピアニストの先生方に集中的にレッスンしていただけるからです。受講生は世界中から若手6人のみ募集、受講曲もベートーヴェンのピアノソナタに絞られ、五日間で五回のレッスンと二回のコンサートという、他にはない非常に充実した講習会でした。事前DVD審査があり、幸運にも受講生に選んでいただくことが出来ました。
初めて訪れた北欧は、思ったほど寒くなく、ベルゲンではあちこちに桜が咲いていました。講習会場は市内から少し離れた場所にある瀟洒な音楽院で、レッスン用のホールと宿泊施設、練習室が全て通路で繋がっており、静かで落ち着いた最高の環境でした。受講生はイスラエル、カナダ、韓国、スウェーデン、ノルウェー、日本から1人ずつでしたが、とにかく皆ハイレベルで、聴講もたくさんいたしました。私はグード先生にソナタ18番、アンスネス先生とアルニム先生にはソナタ32番をご指導いただきました。初日のレッスンはグード先生。ベートーヴェンピアノソナタを全曲録音されていますし、私自身日本で何度もCDを聴いてきた憧れの巨匠です。私の演奏をとても褒めてくださいましたが、レッスンが始まるや否や衝撃を受けました。同じピアノとは思えない、グード先生のクリアで無重力のような音の粒を目の当たりにし、感動で言葉を失いました。様々な版や最新の校訂を調べ尽くされていて、多くのご提案をいただき、随所に先生の音楽の創り方や考え方を感じながら、怒涛のレッスンを夢中で受講しました。 アンスネス先生とアルニム先生には、動と静のような対照的なキャラクターを感じました。お二人に同じ曲をご指導いただきましたが混乱は全くなく、むしろ絶妙なバランスでパズルのピースがはまるような感銘を受けました。アンスネス先生は演奏効果を上げるためのテクニックを知り尽くしていらっしゃり、プロの技を細やかに伝授してくださいました。世界を股にかけて活躍されているピアニストならではの素晴らしいレッスンでした。アルニム先生は大変知的な方で、ピンポイントで明確な問題提起をしてくださるので、教わる側も納得して受け入れることができます。音楽を自然に捉えた解釈で、お人柄も素晴らしくて心に響くレッスンでした。
期間中一日だけ、ベルゲンから船で二時間程のローゼンデルという所へ皆で移動しました。大自然に囲まれた美しい場所でコンサートをした後、お城でディナーをいただきました。またグード先生のリサイタルにも伺いました。日本には2000年頃に行ったきりだとおっしゃっていたので、生の演奏を聴かせていただき幸運でした。バッハ、ショパン、ベートーヴェンの贅沢なプログラムを堪能し、中でも私は先生の幻想ポロネーズに深く心打たれました。 連日のハードスケージュールでしたが、今の私にとって大きな財産となるマスタークラスでした。受講生同士も大変仲良くなり、切磋琢磨し合いながら学びました。このような機会に恵まれたことを改めて感謝しております。最後になりましたが、この度の参加に際し、福田靖子賞基金様に多大なご理解とご支援をいただき、心より厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。これからも一層頑張ってまいります。